短編小説『ろくに生きられない』
「もうダメだ」そう思った。特別派手に転んだわけではないけれど、久しぶりの転倒に動転した。転がるように倒れ、気付けば目の前には地面があった。
「あ、転んだのか」そう実感するまでに間があった。自分の状態を確認する前に自分が今どこにいるのかが気になった。顔をあげてみると、ずっと遠くに光り輝く場所が見えた。それまでの道も所々でキラキラした光が溢れている。
ふと人の気配を感じて視線を動かす。彼だった、と思う。顔が、体の輪郭が、全体にぼんやりしていてハッキリとはわからない。起き上がらせてくれるのだろうか、やや屈んで手を差し伸べている。私がその手を取ろうか迷っていると、彼はまた歩き出した。
いつもそうだ、と後姿を見ながら思った。彼は手を貸そうとしてはくれるけれど、それが下手くそなのだ。「大丈夫?どうしたの?」と言って手を差し出してはくれるけれど、その手に捕まることがどうも出来ないのだ。手に手を重ねればいいだけなのに、どうも上手くいかない。私がいけないのだと思った。私が上手くその手に頼れないから、起き上がれないのだと。しかしどうも違うようだ、と最近になって感じる。彼の起こし方と、私の立ち上がり方が違うのだ。やり方が違うのでは起き上がれるはずもない。どちらも悪くはないのだ。どちらのやり方も間違っているわけではない。ただ、合わないのだ。けれど彼はそれに気付いていない。とにかく手を伸ばし、起こす意思があることを伝えて、どうして転んだのか聞いて、自分のやり方で助けようとする。それが相手にとってどうということは考えないのだ。“そうしている自分”を認識したらそれで彼自身は合格なのだ。結果がついてこないのは、向こうの問題もあるから、自分のせいとは限らない。おそらく、そんな風に思っているのだろう。
一方で私は、転んだことも、起き上がれないことも全てを自分のせいだと考えている。誰かのせいにするよりはマシだとも思っている。だから、自分のせいで起き上がっていきたい。助けてほしいわけでもない。ただ、彼が傍で待っていてくれたら嬉しいと思う。自分で蒔いた種は自分で摘み取るから、それが終わるのをぼんやり待っていてくれたらいい。
ところでここにはアスファルトの道が一本、黒い線のように真っ直ぐ通っている。私はその上にうつ伏せになり、腕をついて首を上げて回りを見ている。転んだ拍子に泥まみれになり、地面に打ったあちこちがズキンズキンと、じんじんと痛む。アスファルトの周りには薄いオレンジ色が広がっている。その薄いオレンジ色は、ベルトコンベアのように後ろへ流れていく。
アスファルトが見えないくらい遠くの地平線は、爆発でも起きたように白く輝いていた。眩しくて直視できないほどだ。その光とは別にすぐそこでもキラキラした光が粉雪のように舞っている場所がある。もうすぐ目の前で、今にも手が届きそうだ。薄いオレンジの流れに乗って、少しずつこちらに近づいてくる。私が転んで泥まみれでも、体中が痛くてもお構いなしに近づいてくる。私はそれが、とても不安で恐怖すら感じた。その気持ちに気付いたとき、地平線の爆発したように白い光もこちらに向かってくると直感し、ますます恐怖を感じた。
「こんなに泥まみれになっているのに、地面に打ちつけた箇所も痛むし、あんなに美しく輝く光りの中に、私なんかが入っていけるのだろうか」私はうつ伏せになったまま硬直した。身のすくむような恐怖と焦りが全身を強張らせた。
「もうダメだ、もうイヤだ」思い返せば、もう何度目かの弱音が胸いっぱいに広がって、喉を塞ぐ思いがした。
だが、その光りを避けるわけにはどうもいかなそうだった。全く手がないわけではないのだろうが、避けたら避けたでそちらの方がもっと厄介なことになりそうだった。例えこの不様な格好のままでも入ってしまうほうがいいような気がした。しかし、そう簡単でもないようだ。光りの中に入ったら、光りのエネルギーによって、強制的に起き上がらなくてはならないのだろう。きっと、下から突き上げるようにして体を持ち上げられるのだ。そしてそこには多くの人がいて、人目に晒されるだろう。否が応でも泥を落とし、人に見られても恥ずかしくない程度には身なりを整えなければいけない。そして光りを通り過ぎたあと、エネルギーがなくなればまた、いや、今よりもっと、派手に地面に倒れ込むかもしれない。私が恐怖に感じているのはそのこともわかっているからなのか。
そこで私は、またしても彼の手を思い出した。あの時彼は手を伸ばしてこう言った。「やれるだけやってみればいい」。
―やれるだけ。
やれるだけ、とはどこまでのことだろうか。どこまでやっても“やれた”とは思えない気がする。私は自分で合格点を出すことができないのだ。“やれる”という事は一〇〇%できる状態のことを言うのであって、七〇、八〇%では“やれた”とは言わない、そう思ってしまうのだ。だから苦しいのだ。そして、光りのエネルギーで無理やり起き上げさせられてしまえば楽しめるのだろう。だがしかし、今の私に楽しむ価値はあるのだろうか。楽しんでもいいのだろうか。泥を落とし、服を替え、身なりを整えて、光りの中に入るに相応しいそれ相応には見せることができるだろうが、もう一人の私が言うのだ。
『お前の本当の姿を知っているぞ?本当はここに居るべき人間じゃないことを見抜かれているぞ。』その脅しがとても怖いのだ。
その光りを、諸手を挙げて受け入れられるときはいい。けれど、今のようにアスファルトを目の前にするほど転んでしまった場合、途端に光りそのものが恐怖の対象になってしまう。その光りに見合う人間ではない、私はボロを隠しているだけのクズのような人間だ。あんなに、神々しいほどに、キラキラと輝く光りとはまるで別の正反対の人間なのに。そう思えてしまうのだ。そして苦しくなる一番の原因は、一度転んでしまうと、その光りに見合う人間になるために試行錯誤するが、何をどこまでやってもそういう人にはなれないと決めつけてしまうのだ。どこまでやっても“やれた”と合格させてあげられないのだ。ゴールのないマラソンのように、どこまでも「まだやれるのでは?」「みんなはもっとやっている」とせっつかれてクタクタになってしまう。「これだけやってもダメならもういいよ」と諦めようとすると、今度は『なんだ。がんばるくらいならやめるっていうのか』と聞こえるのだ。やってもやっても合格しないからやりたくないのだ。がんばりたくないわけではない。
いや、そうでもない。がんばることも好きではない。がんばらなくてもいいではないかと思う。「がんばったから」という理由がそもそも得意ではない。いいじゃないか「生きているから」という理由だけでも。生きているだけで充分がんばっているではないか。
と自分の中で二つの声がする。がんばらないといけないと言う私。生きているだけでがんばっていると言う私。どちらも本当の声だが、どちらも嘘くさいとアスファルトに倒れ込む私。ろくに生きることもできないのだ。
2019年になりました!!
去年は愛犬の不幸があったので、今年のお正月は喪中としています。
なので、今年も宜しくお願いいたします、とだけ綴ります。
今年も面白い映画を発見しましたら、気まぐれで更新していこうと思います。
(今日の更新もかなりお久しぶりですが)
そして、出来ればちょっとしたエッセイのような小説のような、何か物語めいた文章も公開していきたいと考えています。
突然にそのようなブログになってもどうぞお付き合いくださいませ。
さて。今日は、お正月休みに鑑賞しました、珍名作を二本、とっても雑にご紹介させていただきます。
雑に、というところがポイントで、酷評したいのではなく、観る人・観るタイミングによっては刺さるような名作であることが前提なので珍名作と名付けました。
まず一本目は『永い言い訳』です。
「もっくんがおネエになって、お嫁にいっちゃうお話」
すんごい、雑に紹介すると、こんな作品でした(笑)
鑑賞前は、妻が事故に遭った瞬間も浮気をするような女グセの悪い夫が、その後も浮気を繰り返して自己嫌悪に陥っていく話しかと思っていました。
その自堕落っぷり、女に逃げちゃうダメんずっぷり、そして深津絵里さんともっくんとのラブシーンに期待を膨らませていたのですが、ぜんぜん違いました。
(そもそも深津絵里さんは亡くなる奥さまの役でしたしw)
妻の死をきっかけに、自分と向き合うことができた悲しい男を描いた作品でした。先入観を入れ替えてまた鑑賞してみたいです。
原作・監督:西川美和、主演:本木雅弘、深津絵里、竹原ピストル。
次は、『渇き。』です。
こちらは「血と暴力と血と、少しのエロティシズムと血と狂気と血と、かなりグロテスクな殺しと血のお話」でした。
とにかく血!渇きとは、血に飢えている様子を表したのではないかと思うほど、常に血しぶきが見られました。R15指定なのも納得です。
これまた鑑賞前の印象と大きく異なりました。
鑑賞前はもっとエロティシズムが全面に描かれるのかと思っていたのです。(ここでお気付きの方もいるでしょうが、私はエロティックな作品が好きですw)
その思い込みから、私は役所広司さんと小松菜奈さんにエロさを感じず、映画館での鑑賞には至りませんでした。
しかし中島哲也監督の作品は好きなので、ずっと気になっていたので今回、鑑賞したというわけです。
エロさにも狂気や暴力性やグロさが滲み出ている作品でしたが、中島監督らしい作風に仕上がっていました。
けれど、やや血がしつこかったかな。。
監督:中島哲也、主演:役所広司、小松菜奈、オダギリジョー、妻夫木聡
以上です。
では、またいつになるかわからない次回!
懐かしい?新しい?再放送中の『東京ラブストーリー』④
「セックスしよう」というリカの誘いで、リカの家で朝を迎えた完治は、心ここにあらずな状態。
さとみと三上が結ばれたことを知ったショックで、こうなってしまったことをどう受け止め、処理すればいいのか迷っている様子に目ざとくリカは気付きます。
それを誤魔化すために「責任とか思ってる?東京の女の子はみんなこういうもんだよ」と、何でもなかったように話し、完治は更に戸惑います。
ある日三上は、関口を友達と思えるなら、俺たちを祝福してくれ、と完治を誘いますが、さすがに三人は気まずくリカに付き合ってくれと申し出ます。
四人は水族館へ出かけ、完治とさとみの友情を取り戻しますが、リカと三上はそこに未練があることを見抜きます。その嫉妬から一緒に暮らすことにしたと報告します。しかしそれに戸惑うさとみ。
三上に「そっちはうまく行ってんの?」と聞かれ咄嗟に完治は「なんでもねぇよ」と答え、リカを傷つけてしまいます。
その帰り道でリカに「まださとみちゃんのこと好きなの?」と問い詰められ、完治は「誰とでも寝るのか」と言い返しリカを怒らせてしまいます。
それを機に「もう終わりしよう、空港で会ったときからこれまでのこと、なかったことにしよう」と言い、リカは完治から離れます。
その後すぐに出張で会社を空けるリカ、その間に完治はリカのいない日々に淋しさを感じます。出張から戻って来る日を待ち望んでいましたが、会社では無視されてしまいます。
しかしデスクの下に「カンチ」と書かれた雪だるまを見つけ、リカの元へ駆けつけます。
そして自分の気持ちを告白し、二人は結ばれることに。
三上はさとみの完治への想いに嫉妬し、きつく当たってしまいますが、信じてもらえないさとみは三上への不信を深めてすれ違ってしまいます。
しかし、ようやくさとみへの想いを絶った完治はリカの存在の大きさに気付き、ようやく結ばれたのでした。
懐かしい?新しい?再放送中の『東京ラブストーリー』③
今、再放送中の『東京ラブストーリー』第三話まで進みました。
放送はもう既に9話まで進んでいますね。
二話で、さとみへの告白を取り消し、リカの待つ喫茶店まで駆けつけた完治でした。
さとみの自宅前で待っていた三上は「振られちゃった」と涙を流すさとみにハンカチを差し出しますが、「こんなときに優しくしないでよ」と拒絶します。
その後、整理のつかないさとみは完治と話をします。しかし完治は「三上が好きなんだろ。三上とキスしたときの涙は、あの日、店で見せた涙を同じなんだろ」と、さとみの気持ちを優先し、身を引きます。
けれどその夜、お詫びにリカと出かけた店に三上は別の女の子といます。
完治はそこに入っていって「何してるんだ」と詰め寄ります。
リカの気遣いで二人になり三上は「本当にいいのか、俺が関口の気持ちを全部受け止めても」と聞くと、「俺の口出すことじゃない」と答える完治。
三上は完治の意思を確認すると、さとみに会いに行きます。「三上くんのこと、本当に好きになっていいの?」というさとみの不安に応えるように、アドレス帳を燃やし、二人は結ばれます。
翌朝、三上は完治に「さっき関口が帰った。あいつと寝たよ」と報告。ショックを隠せない完治にリカは気付き、懸命に励まします。
会社の同僚に完治のことを悪く言われ、ひっぱたいてしまったリカ。完治は事情を知り、リカを励まします。
「LoveじゃなくてLikeでいいからさ。好きって言って」と強請るリカに「好きだ」と答える完治。そしてリカは「ねぇ、セックスしよう」と笑顔を見せるのでした。
さとみの気持ちに気付いて、身を引いた完治でしたが、さとみは自分の感情が何なのか、どっちに対する気持ちを“好き”と呼ぶのか判断しかねていて、揺れ動いていました。
傍から見ているリカと三上はそれに気付き、二人がまだ思い合っていることに悲しみます。
懐かしい?新しい?再放送中の『東京ラブストーリー』②
現在放送中、『東京ラブストーリー』の第二話を視聴しました。
完治の前に現れた三上は「昨日待ってたのに」と問い詰めます。
それを見ていたリカはこっそり「かんち知ってるよ」と、三上とさとみのキスを目撃したことを伝えます。
そして二人は完治の家に押しかけますが、三上のふざけた言い訳に完治は怒り、部屋を出て行きます。
リカは「三上くんだって本気でさとみちゃんのこと好きなんでしょ。だからわざと嫌われるようなことして彼女を譲ろうとしてる」と、三上の心を見抜きます。
三上もまた「永尾が好きか。でもあいつは関口を…関係ないのか」と理解するのでした。
家を出た完治はさとみをデートに誘いますが、そこにリカも現れます。
三人で食事をすることになり、さとみが席を立った隙に完治は「人のデートについてくるか?」とリカに詰め寄ります。
その勢いでリカと部長の不倫に触れ、「好きなら誰とでも寝るのかよ」という言葉にリカは傷つき、帰ってしまいます。
その帰り道、さとみを送る道すがら完治はついに告白。付き合おうと持ち掛けます。さとみの心は揺れます。
翌日、リカは仕事で完治にムリを強いるのですが、結局はフォローし、そのお詫びとお礼を兼ねて二人で食事に行く約束をするのです。
約束の19:00。完治の元に、こないだの返事をするとさとみからの電話が。
完治はリカのデスクにメモを残しますが、リカは気付かず、約束の店に急ぎます。
さとみは高校時代、完治に助けてもらったことを思い出したと語りますが、「それ、俺じゃなくて三上だよ」と告げる完治。事実を知ったさとみの表情から全てを悟った完治は「付き合おうって言ったの、なかったことにして」とさとみと別れるのでした。
そして、さとみの家の前には三上が待っていて、「永尾くんに振られちゃった」と涙を流します。
一人やけ酒を飲んでいる完治の元に会社の同僚たちが現れ、リカが待ち合わせの店に行ったことを知らされます。
店が閉まったあとも雨の中で待つリカの元に完治が現れます。「かんち、帰っちゃったかと思ったよー」と明るく振る舞いますが、ふと笑顔は消えて「もう電池切れちゃったよ。こんなに近くにいるのに、なんでこんなに遠く見えるの?」と完治の胸に寄りかかったときには23:00を回っていました。
そして、リカは「一緒にいたいはずなのに、なんで…」とふらつきながら帰っていくのでした。
リカは、さとみを好きなことも承知の上で、それでも迷わずにかんちを好きだと突き進みます。そんな真っ直ぐが痛々しいほど。部長との不倫も「好きになっちゃったんだもん、しょうがないじゃん」と恥じることさえしません。完治に否定されたときも「だったら教えてよ!人を好きにならない方法!」と怒りをぶつけます。
一方、完治はリカの気持ちがどこまで本気なのか分かりかねていました。キスされたことも、ふざけているのだろうかと混乱気味。田舎から出てきたばかりの純粋な青年なのでしょう。
タチが悪いのは三上とさとみです。
お互いに好きなのに、人を本気で好きになったことがない三上はさとみを想うあまり、他の女で淋しさを紛らわせます。
そしてその女癖の悪さに嫉妬して、のめり込むまいと必死に留まろうとするさとみ。
そこに完治の告白を受け、そっちに逃げようとするも、三上への想いを見抜かれます。
完治でもわかる程なのに、自分ではその気持ちに気付かないさとみは、三上に「振られちゃった」とまた逃げます。
昔見た記憶、イメージの固定概念があるだけにどうしてもリカ贔屓な見方をしてしまいますが、改めて見てみると、それぞれの思いに気付きますね。
それでも、自分の気持ちに素直にならないでいることは、周りの人たちを傷つけるのだとも感じました。
リカのように、素直に真っ直ぐ誰かを好き!って言えるのはある意味、本当に強いことなんだなと考えたりします。
懐かしい?新しい?再放送中の『東京ラブストーリー』①
織田裕二主演の秋ドラマ『SUIT』スタートに伴い、現在フジテレビでは『東京ラブストーリー』を再放送中です!
毎日3:50~やっているので、9月21日で既に第6話が放送されました。
リアルタイムには追いつきませんが、私なりに一話ずつ解説していきたいと思います。
なので、しばらくは『東京ラブストーリー』ブログになりますので、ご了承くださいませ。
ではまず、第一話。
永尾完治(ながおかんじ)は愛媛から上京して来ます。空港に迎えに現れたのは同じ会社に勤める自由気ままで明るい赤名リカ。プレートを掲げ、大きな声で「ながおかんちー」と叫ぶリカに翻弄されて完治の東京生活は始まります。
完治の上京を機に、東京に出てきている同級生たちが飲み会を開催します。
高校時代、完治は優秀で男前な三上健一と、大人しく控えめな関口さとみと共に過ごしていました。
その飲み会で、完治はさとみに、さとみは三上に再会するのを期待し楽しみにしていたのでした。
しかしその道中、偶然にも街でリカに出会った三上は、そのまま飲み会に連れてくるのでした。
その飲み会でリカは目ざとく完治がさとみに恋していることを見抜きます。事実、完治は高校から想いを告白できなかった人がいるから会いたいと漏らしていたのです。
ある日、完治、三上、さとみの三人は昔のように東京を満喫していました。しかし仕事のトラブルが発生し、リカが完治にヘルプを求めます。
完治とリカの見事な連携でトラブルは回避。三上とさとみが待ってるから、お礼におごるとリカを誘い、二人の元へ向かいますが、信号待ちで三上とさとみがキスを交わしているところを目撃してしまいます。
実は三上もさとみのことを好いていたのですが、完治に対する態度と違うことから、自分はさとみに似合わないと思い、距離をとってきたのでした。
「そんなはずない」と言うさとみにいきなりキスをした瞬間だったのでした。
傷ついたであろう完治を気遣って、明るく笑うリカに完治にも笑顔が戻ります。
「また明日ね!」「ちゃんと寝て」「寝坊すんなよ」と言い合いながら向き合ったまま後ろ向きに歩き出します。
「このままじゃ帰れないよ」という完治。
「じゃあせーので振り向こう」とリカ。
「「せーの」」で完治だけが振り向き、歩き始めますが、リカはその背中を見つめたままでした。
それに完治が気付き、「ずっちーなぁ」を笑うのでした。
その笑顔にリカも満面の笑みを浮かべて「かんち」と何度も呼びかけます。
「何だよ」と優しく返す完治の元に「かーんち!大好き」と走って飛び込むリカ。
呆気にとられた完治は「え?」と戸惑いますが、満足気な笑顔で帰っていくリカなのでした。
見どころは何と言っても元気いっぱい、自由気まま、天真爛漫なリカのキャラクターです。初めて会った完治に対しても「もっと早く来てよ~叫ばないで済んだのに~」と文句を言うほど。それでも憎めないほど可愛らしい笑顔を振りまくのです。
鈴木保奈美さんが一躍人気女優になったのも、この「かーんち」と呼びかける可愛さから。
一方、真面目な完治は、リカの自由な言動に振り回されますが、それさえイヤな顔せずに付き合います。お人よしな性格のせいでさとみには想いを告げられずにいますが、それもまた完治の良さなのでしょう。
リカと完治が話をするシーンで、完治が口ごもると受話器を持った仕草で「もしもーしながおかんちくーん?」と電話をかけるのです。
完治も背中を向けたまま「何すか」と電話に出るという場面が何度もあります。
話したくないときは「ぷーぷーぷー」と話し中の音を出すと、リカは「誰と話してるのー!?」とヤキモチを見せます。
思ったことを口に出してしまうリカは、第一話のラストで思わず「大好きー」と完治に飛びついてしまいますが、そのすぐあとに「あ、言っちゃった。悔しいなぁ」とぼやいたりもします。
そんな明るいリカがどこまでも可愛い作品。
今の若い方には古く見えるのか、新鮮に見えるのか不安ですが、
アラサーの私には懐かしい感じが強かったです。
電話番号の交換も当然、家電。
巨大な受話器を耳に当てて話すシーンも実体験こそないものの、当時は憧れながら見ていたのを思い出します。
大人になったらこんな生活をしてみたいと(笑)
別れのセリフが胸に刺さる、名台詞集!!
ここ最近、死別をテーマにした作品を多く鑑賞する機会があったので、別れのセリフが印象的なシーンをまとめてご紹介しようと思います。
恋空
「ヒロ、もうすぐだよ。もうすぐ会えるよ」
「美嘉、笑って…」
病に侵されたヒロとようやく結ばれた美嘉は、休学をしてヒロの看病に専念します。
毎日病院を訪れていたのに、“その時”は美嘉が出かけていた時でした。
ヒロに頼まれた写真を現像に出しに行った帰り、テレビ電話で最期の会話を交わします。
電話をしながら走って病院に向かう美嘉は、懸命にヒロに呼びかけます。
「もうすぐだから、もうすぐ会えるから」と泣きながら走ります。
その姿を見て、ヒロは優しい声で笑って、と言います。
美嘉は立ち止まり、泣き笑いのような笑顔を見せると、ヒロは息を引き取るのでした。
世界の中心で、愛を叫ぶ
「出会えてよかった、バイバイ」
亜紀の死を受け入れられないまま大人になった朔太郎は、恋人を追って地元に帰省します。
そこで今まで目を背けてきた本当のことを知ることに。
亜紀が最期に残したカセットテープを聞きながら、亜紀との思い出を振り返り、亜紀の希望だったオーストラリアの地に散骨をしに向かうのです。
そこで最後のテープを再生します。
亜紀は自分がもう長くないことを悟り、朔太郎にもう一緒にいない方がいいと思う。と語り、朔太郎と出会って、恋をしたことに感謝し、別れを告げるのでした。
「生きることを諦めないって約束して」
処女航海で氷山に追突し、沈没した二十世紀最悪の海難事故。
一等の乗客だったローズは、三等の客ジャックと恋に落ちます。
婚約者のいたローズですが、ジャックとの恋に生きようと決意します。
濡れ衣をかけられ、捕まってしまったジャックを助け、二人は沈んでいく船からの脱出を試みます。
一度は救命ボートに乗せられたローズでしたが、思いとどまって、タイタニックに飛び移ります。
ローズが自殺しようとしたとき、ジャックが引き留めてくれた言葉、
「飛び込むときは一緒」よ、と言ってジャックの元へ戻るのです。
そしていよいよタイタニックは沈没。
海上にはボートに乗れなかった人々が救助を待ちます。
ジャックとローズも太平洋の真ん中でただ浮かんでいるしか術がありませんでした。
二人は手を取り合って、励まし合います。
「大丈夫、救命ボートがきっと戻ってくる。だから生きることを諦めないで、約束して」
一度は、自殺を考えたローズですが、「健康な体があれば充分」というジャックの生き方に惹かれていきました。
冷たい海に浮かびながら二人は約束を交わし、ジャックが息を引き取ったあと、ローズ約束通り、一人で生き延びるのでした。
ゴースト ニューヨークの幻
「I love you」「Ditto」
サムとモリ―はデートを楽しんだ帰り道でした。
モリ―は思いきって「愛してるわ、あなたと結婚したいと思ってる」とサムに告白します。
しかしその話題を避けてきたサムはモリ―の告白に「Ditto」(同じく)としか返しません。モリ―は「いつもそう。“愛してる”とは言ってくれないのね」と不満を口します。
するとそこへ暴漢が現れ、サムが撃たれてしまいます。
自分の体を抱きしめて泣き崩れるモリ―をみて、自分の死に気付くゴーストとなったサム。
モリ―の身にも危険が迫っていることを知り、彼女を見守り続けます。
そしてサムの死の真相がわかり、モリ―が安全だとわかると、空から光が射して、サムを迎えに来るのでした。
その光がサムに当たると、これまで見えなかったモリ―にも彼の姿が写り、最期の別れをします。
ずっと言えなかった「I love you」を言い残すサムに、モリ―は「Ditto」と答えるのでした。
番外編
「生涯でただ一度のキス。ただ一度の恋」
これは、映画『ただ、君を愛してる』のキャッチコピーになった言葉です。
物語は、成長すると病気になってしまうという不思議な病を抱えた静流が、大学の同級生、誠人に一目惚れするところから始まります。
誠人の傍にいたいと思うようになり、写真を始め、一緒に撮影して歩くようになり、誠人も次第に静流を意識していることに気付きます。
そして静流は誕生日のプレゼント代わりにキスを強請ります。
彼女はポートレート写真に興味を持ち、自分達を被写体にするのでした。
そして数年後、誠人はニューヨークで開かれる静流の個展に招待されます。
彼女を訪ねてニューヨークへ向かうのですが、そこで待っていたのは、同級生のみゆきでした。
そして誠人は静流がもうこの世にいないことを知ります。
静流は、誠人に恋をしたことで、成長したい、女性らしくなりたいと思うようになってしまい、病気を悪化させてしまったのです。
誠人に残された手紙には、彼への想いが綴られていました。
そして個展会場には、大人の女性へと成長した静流の写真が飾られていたのです。
そして、あの思い出の写真には『生涯でただ一度のキス。ただ一度の恋』というタイトルがつけられていました。